虫歯が再発して再治療が必要となる原因と予防方法

虫歯が再発して再治療が必要となる原因と予防方法

虫歯の治療終了後、何年か経ったときに再び治療した歯が痛み出した経験はありませんか?
大人が虫歯になる原因の多くは、「虫歯の再発(二次虫歯)」です。

「むし歯」というと、子どもにできるイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、子どもの虫歯は年々減少*1しています。
一方で、大人の虫歯罹患率(治療済み・未治療の合算)は約90%と高く、この数値は約30年前に比べて、あまり変わっていません。
また、40歳以上の約40%は「虫歯」が原因となり、歯を抜いている状況が続いています。*2

なぜ、一度治療したにも関わらず、また虫歯になってしまうのでしょうか?

今回は、「虫歯の再発」の原因、治療中・治療後に行える再治療リスクを下げる予防法をご紹介します。

*1(参考)厚生労働省|歯科医療についてP.6「3歳児、12歳児の一人平均う蝕歯数の年次推移」
*2(参考)厚生労働省 e-ヘルスネット|大人のむし歯の特徴と有病状況

虫歯の再発「二次虫歯(カリエス)」の特徴

治療した歯に虫歯が再発することを「二次虫歯」「二次カリエス」と呼びます。
特に大人の場合、虫歯になる原因の多くが、この「二次虫歯」です。

二次虫歯には、次のような特徴があります。

虫歯がより進行しやすい

虫歯部分を取り除くため、虫歯部分よりも深く削って治療しているので、虫歯菌がより奥深く進みやすく、神経に達しやすくなっている。

虫歯に気づきにくい

天然歯とは異なり、銀歯など詰め物・被せ物で治療しているため、外から虫歯に気付きにくい。
また、神経を抜いた歯は痛みを感じないので、気づくのがより遅れる傾向がある。

上記のことから、虫歯を発見した時には虫歯がかなり進行していて、歯を抜くことになってしまうケースも珍しくありません。

虫歯の再発による再治療が必要となる原因

再治療が必要となる原因には、次のようなケースがあります。

銀歯(詰め物・被せ物)の治療から長期間経過

詰め物・被せ物による治療は、初期虫歯(C1)~ほとんど歯がない虫歯(C4)まで、どこの歯科医院でも行われている治療です。
しかし、この詰め物・被せ物の劣化こそが、二次虫歯の原因で一番多いのです。

接着剤(セメント)の劣化

詰め物・被せ物などの人工物は、「接着剤(セメント)」を使用して、残った歯につけています。
一見すると、詰め物・被せ物は歯にピッタリくっ付いているように見えますが、実際は目に見えない「継ぎ目」が存在しています。

保険治療で使用されている「接着剤」は、装着時間の経過に伴い、次第に劣化し、溶け出していきます。
その結果、歯と銀歯などの詰め物・被せ物との間にわずかな隙間ができ、そこから虫歯菌が侵入し、虫歯が再発してしまうのです。

銀歯など詰め物・被せ物の劣化

これまで日本の保険治療で行う詰め物・被せ物といえば、ほぼ「銀色の詰め物(メタルインレー)・被せ物(メタルクラウン)」が使用されています。
この銀色の金属は、広く「銀歯」と呼ばれていますが、100%銀素材ではなく、腐食を防ぎ強度を上げるため、銀のほか金・パラジウムなどの金属を合わせた「金銀パラジウム合金」が主に使われています。
金銀パラジウム合金は、時間経過とともに少しずつ酸化し、次第に金属の溶けだし、錆びなどが起こり、歯との間に隙間ができることで、虫歯菌が侵入してしまうのです。

なお、銀歯の使用寿命は、個人の使用環境にもよりますが、平均約3~5年とされています。
う蝕治療ガイドライン(第二版)の中でも、メタルクラウン(銀歯)の10年生存率は55.8%であったとする日本の論文*3を紹介しています。

*3(参考)特定非営利活動法人 日本歯科保存学会|う蝕治療ガイドライン(第二版)P.145-146

銀歯(詰め物・被せ物)が取れたまま放置・自分ではめ直した

銀歯などの詰め物・被せ物が取れても、すぐに歯医者さんへ行かない・行けないことも二次虫歯になる原因です。

銀歯などの詰め物・被せ物は、接着剤でくっ付けることにより、虫歯菌が歯の内部に侵入することを阻止し、歯を保護しています。
詰め物・被せ物が取れたままということは、たとえ小さい詰め物であったとしても、穴が開いている状態です。
食べ物が溜りやすくなるだけでなく、虫歯菌が侵入しやすい状態となっています。

また、詰め物・被せ物の下の歯は「象牙質」です。歯の表面を覆っている硬いエナメル質とは異なり、象牙質は柔らかい組織なので、虫歯菌が侵入すると、一気に進行が加速します。

虫歯の取り残し

虫歯の取り残しは、初期虫歯(C1)や本格的に進行した虫歯(C2)でもありえますが、特に、神経まで達した虫歯(C3)以降に行う、歯の根の治療「根管治療」において、二次虫歯の原因になりやすくなっています。

保険治療で行われている「根管治療」は、じっくりゆっくり時間をかけて、再発や炎症リスクを下げるような治療法というよりも、現在起きている痛みなどの症状を抑え、問題なく生活ができるようにするための処置を行っています。

また、根管は歯の奥深くにあり、網目状に入り組み、無数に枝分かれしている上、さらに長さや形も人によって違います。
しかし、時間やコストの制限から、保険治療では「肉眼」で医師の経験と感覚による治療となる場合が多いので、小さい根管や感染部位の見落としも少なくありません。
そのため、根管治療を受けた約半数が再治療(再根管治療)になったとする調査結果*4も報告されています。

なお、根管治療による虫歯の再発については、次の記事「歯の根の治療は50%の確率で失敗…なぜ再発して痛みが出る?4つの理由」で詳しく説明しています。

*4(参考)再根管治療を考える|日歯保存誌 58(3):179~184,2015

清掃不良

しっかり歯を磨けていないなど、口の中の衛生状態が悪い場合には、虫歯菌の栄養となる歯垢(プラーク)が蓄積し、虫歯が再発します。
また、詰め物・被せ物の中でも、特に金属である「銀歯」は静電気が発生することから、歯垢や歯石*5を付着させやすく、虫歯の再発に繋がりやすい素材となります。
*5 歯石:歯垢が唾液の中のカルシウムなどと結びついて、石灰化したもの

治療段階からできる虫歯の再発対策

虫歯の再発対策は、治療段階から行えます。
次にあげる3つのポイントを意識して、虫歯治療を受けると良いでしょう。

①詰め物・被せ物の素材を「銀歯」から「セラミック」にする

保険治療で使われる「プラスチック・銀歯」の詰め物・被せ物および接着剤は、劣化しやすい上、歯垢を寄せ付けやすい素材であることが虫歯の再発要因となっていました。

虫歯再発リスクを軽減できる詰め物・被せ物の素材として、おすすめなのが「セラミック」です。

セラミックというと、見た目のきれいさ(審美性)で有名ですが、陶器のようなツルツル素材なので、歯垢が付きにくく、歯との接着性も良いという機能面も充実した素材なのです。
なお、セラミックは保険治療では使えない素材なので「自費治療」になります。

②「マイクロスコープ」「ラバーダム」を使用する歯科医院を選ぶ

虫歯の再発で特に注意したいのが、「保険治療下の根管治療後」です。
保険治療でも歯科医が丁寧に「根管治療」を行っていますが、時間・コスト・器具など様々な制限があるため、感染部位の完全除去は難しく、何年かすると再治療になってしまうことが多々あります。

根管治療の再治療を防ぐためには、「マイクロスコープ」「ラバーダム」を使用する歯科医院を選ぶと良いでしょう。

「ラバーダム」は薄いゴムシートで、治療する歯だけを露出し、唾液など細菌が入らないように防ぐものです。
海外では、ラバーダムを使用した再根管治療の方が、治療後の経過が良かったとする調査結果*6もあります。
さらに、「マイクロスコープ」は、肉眼では見えないような小さな根管や感染部位も約20~30倍に拡大でき、しっかり確認しながら治療することができるので、見落としを回避することが可能です。

欧米などでは、いずれの器具も根管治療の必須アイテムとして使用されているものですが、日本では「自費治療」で根管治療を行っている歯科医院で主に使用されています。
※一部の歯科医院では、保険治療でも使用する場合があります。

なお、マイクロスコープやラバーダムを使用した根管治療を行う病院は、次の記事「歯の根の治療が得意な歯科医院を探す方法・根管治療の専門医とは?」で詳しく説明をしています。

ラバーダム使用イメージ(画像)ラバーダム使用イメージ

*6(参考)Van Nieuwenhuysen(1994)Retreatment or radiographic monitoring in endodonticsInt Endod J(2):75-81.(原文英文)

③口内環境を検査する

虫歯の発生は、生活習慣や環境の影響を大きく受けるため、発生リスクも人それぞれ異なります。
虫歯の再発を効果的に防ぐためには、「口内環境の検査」で虫歯リスクを明確にしておくと良いでしょう。

次のような検査により、口内環境を調べることができます。

唾液検査

唾液の分泌量、プラーク(歯垢)量、虫歯菌が作り出した酸を中和する能力(緩衝能)を測定することで、問診や視診では分からない、虫歯・歯周病のなりやすさ(カリエスリスク)を調べることができます。
検査方法は、味のないガムを噛んで唾液を採取する方法と少量の水でゆすぐだけで行える簡易方法があります。
費用目安:約5,000円~(簡易版約2,000円~)

細菌検査

歯周ポケットから歯垢を採取し、特殊な顕微鏡(位相差顕微鏡)を用いて、口の中の細菌の活動や種類を確認します。
口内の細菌の種類に合った対処法を取ることで、効率的に口内の細菌数を減らすことができるので、虫歯の再発リスクを下げることが期待できます。
費用目安:約3,000円。

治療後にできる虫歯の再発対策

これまで歯科医院を受診するきっかけの多くは、痛みなどトラブルが起こってからでした。
治療の度に自分の歯を削るので、再治療を繰り返していれば、いずれ歯がなくなり、最後は抜かざるを得ない状況に陥ります。
そのため、一生使う歯の健康を考えると、痛くなってからの治療では「遅い」のです。

虫歯の再発を防ぐためには、痛みなどの治療が終わった後も歯を守るための治療「予防歯科」を続けるようにしましょう。
「予防歯科」は、ご自身で行う「セルフケア」と歯医者さんで行う「プロケア」の両面から実践することが大切です。

正しくセルフケア(歯磨き・食生活)を行う

虫歯の再発予防で基本となるのが、毎日行うセルフケアです。
正しいセルフケアの仕方を身につけて、虫歯の原因となる「歯垢」を残さず、口の中を清潔に保ちましょう。

正しい方法で、歯磨き(ブラッシング)をする

虫歯予防と言ったら、「歯磨き」と真っ先に思い浮かぶ方も多いことでしょう。
しかし、ただ何となく歯ブラシを動かしているだけでは歯垢は取れず、虫歯予防にならないのです。

次のようなポイントに気を付けて、しっかり歯を磨きましょう。

  • 食後すぐ(30分以内)に歯を磨く
    時間が経った歯垢には、細菌が定着した「バイオフィルム」となり、通常の歯磨きでは取れなくなります。
  • 1本1本丁寧に磨く
    歯ブラシの当て方には4パターンあります。口を「イー」と開いて磨ける奥歯・前歯の表側はブラシの「全面」で磨き、前歯の裏側はブラシの「つま先」「かかと」、舌側・頬側の奥歯にはブラシを斜めに入れて「わき(サイド)」で磨くようにしましょう。

歯ブラシの持ち方・当て方

(画像引用)歯ブラシの持ち方・当て方|熊本県歯科医師会

  • フッ素入り歯磨き粉で磨く
    フッ素は、虫歯菌が酸を作るのを抑える、再石灰化の促進、歯質の強化などの働きがあります。
  • 「歯間ブラシ」「デンタルフロス」を使う
    歯と歯の間は、歯ブラシの毛先が届かないため、虫歯になりやすい場所です。
    歯間ブラシやデンタルフロスを使うことで、歯と歯の間の歯垢が除去できます。

規則正しい食事習慣を送る

食事をすると、口内の虫歯菌は食べ物や飲み物に含まれる「糖」を取り込んで分解し、歯を溶かす「酸」を作り出します。
そのため、誰でも食後の口内環境は「酸性」に傾き、虫歯を再発しやすい環境となります。

次のような食習慣を心がけ、できるだけ虫歯を再発しにくい口内環境に戻しましょう。

  • 甘いものは摂取しすぎない
    虫歯菌は、炭水化物やお菓子などの「糖質」をエサに増殖します
  • ダラダラ食事をしない
    口の中に食べ物がある時間が多い=酸性になっている時間が長い=虫歯リスク大
  • 栄養バランスの良い食事をする
    バランスの良い食事は、虫歯菌への抵抗力を強化します
  • しっかり噛んで、ゆっくり食べる
    唾液には、口内の殺菌・洗浄効果を高める作用、口内環境を中性に戻す作用(再石灰化)があります

また、近年注目されている「キシリトール」は甘みがあるのに、「酸」が作られません。
さらに、歯垢の中の酸を中和させる作用もあります。
そのため、食後にキシリトールガムを噛むことは、虫歯予防にとても効果的なのです。

歯科医院で「定期健診」を受ける

虫歯予防には、歯磨きなどのセルフケアは欠かせません。

しかし、自分ではしっかり歯を磨けていると思っていても、ブラッシングの癖は誰でもあるもので、あまり磨けていない場所がある方も多いのです。特に、セルフケアの歯磨きだけで、こびりついた歯石やバイオフィルムを除去することは至難の業です。

だからこそ、毎日のセルフケアに加えて、歯医者さんによるプロのケアで定期的に歯を守るための治療「予防歯科」を受けましょう。
また、プロケアを主に担当する「歯科衛生士」とは国家資格であり、予防歯科に対する知識を持った専門職なのです。

歯科医院では、次のようなプロケアを行い、虫歯の再発予防に加え、患者さんの歯の健康を守ります。

虫歯健診

新しい虫歯ができていないか、詰め物・被せ物が劣化していないかをチェックします。定期的に確認することで、早期発見・早期治療が可能になるのです。

歯石除去

歯垢が硬くなった歯石は、セルフケアの歯磨きでは落とせません。専用の器具を使って除去するので、除去後は歯がツルツルになり、歯垢が付きにくくなります。

ブラッシング(歯磨き)指導

歯並びは人によって異なります。歯ブラシ以外にも、歯間ブラシ・デンタルフロスなど、その人に合った正しい歯磨きの方法を指導します。

フッ素塗布

市販されているフッ素入り歯磨き粉よりも、歯科医院で使用するフッ素は濃度が濃いので、虫歯の再発予防により効果的です。

まとめ

一度でも歯を削ってしまったら、もう元の歯には戻れません。
また、何度も再治療を行うことによって歯を失うリスクは、どなたにもあります。

治療終了後、虫歯予防のために正しく歯磨きをする、規則正しい食事習慣を心がけるなどの「セルフケア」と歯科医院での定期健診などの「プロケア」を受けることは、とても大切なことです。
しかし、これらの予防歯科だけでは、虫歯の「再発」予防も十分に取れているとは言えません。

虫歯の再発や再治療を防ぐためには、治療後の予防歯科に加え、治療前の「歯科医院の選択」、治療中における詰め物などの「素材選択」も重要なポイントとなります。

歯は一生物です。
歯の健康を守るため、一度「質の高い治療」を検討してみてはいかがでしょうか。

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根管治療のみを行う歯科医院。院長である石井先生は歯科界隈の中でも非常に有名な根管治療を得意とする歯科医師のうちの一人。日本とアメリカの治療技術の向上のための活動として「ペンエンドスタディークラブインジャパン」「石井歯内療法研修会」を主宰。

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