虫歯の進行段階(CO、C1~C4)ごとの症状と治療法
目次
痛みが出たり、歯に穴が開いたりしたら、「虫歯ができた」と気づく方も多いかもしれませんが、「痛みのない虫歯」「痛みがなくなる虫歯」もあるのです。
虫歯は少しずつ進行していくため、虫歯の進行度によって、歯の状態や自覚症状、治療方法は異なります。
今回は、歯の基礎知識と虫歯の進行度ごとの自覚症状、歯の状態、保険診療および自費診療での治療方法について、詳しくご紹介します。
歯の構成(エナメル質・象牙質・歯髄)
私たちの歯は、主に3つの組織から構成されています。
エナメル質
歯の表面の一番外側部分を「エナメル質」と呼びます。エナメル質の厚さは2~3ミリ程度で、人間の組織の中で一番硬い組織であり、半透明です。ただし、酸に溶けやすいという弱点があります。
象牙質(ぞうげしつ)
エナメル層の内側にあるのが「象牙質」です。象牙質は歯の大部分を占め、黄色みがかった色をしています。個人差はありますが、象牙質の色≒その人の基本的な歯の色調(歯の白さ)となります。
また、エナメル質より柔らかい組織なので、虫歯が象牙質まで到達すると、進行が急に早くなります。象牙質に刺激が加わると、痛みを感じることもあります。
歯髄(しずい)
神経線維や血管などが通っている組織のことです。一般的には「神経」と呼ばれ、痛みを感じる部分でもあります。象牙質への栄養補給、炎症など刺激に対する防御の役割もあります。
虫歯の原因と虫歯ができる仕組み
虫歯の原因は、歯の表面に付いたプラーク(歯垢:しこう)の中に含まれる、ミュータンス菌などの「細菌」です。プラークは舌で触れるとザラザラ感じ、プラーク1mg中には、なんと約10億もの細菌が住み着いていると考えられています。
ちなみに、生まれたばかりの赤ちゃんには、虫歯菌がいません。虫歯菌を持つご両親など身近な人とのスプーンやお箸・コップの共有、スキンシップなど、主に唾液を介してうつります。
細菌が糖を取り込み、酸を作り出し、歯の成分を溶かす(脱灰)
食事をすると……
- 虫歯菌が、歯に残った食べ物の中の「糖分」を取り込む。
- 糖分を分解し、「酸」を作り出す。
- 作り出された「酸」により、歯の成分(ハイドロキシアパタイト)が溶け始める(脱灰:だっかい)。
このような脱灰状態が、「虫歯の前兆」なのです。
唾液が歯の酸を中和する(再石灰化)
誰でも食後、歯磨きをせずに放置した場合、「脱灰状態」となりますが、約40~60分経てば、唾液の作用によって、酸が中和されます。
さらに、唾液には一度溶かされた歯の無機成分(カルシウムやリンなど)を修復して、歯の表面に戻す働きもあるのです(再石灰化)。
このように、歯は「脱灰」と「再石灰化」を常に繰り返しているので、両者のバランスが取れていれば、虫歯にならないのです。
脱灰と再石灰化のバランスが崩れると、虫歯ができる
だらだらと食べる、歯磨きの仕方が悪い、寝る前の間食などで、脱灰・再石灰化のバランスが崩れ、脱灰状態が続くと、穴が開くような虫歯になってしまいます。
虫歯の進行段階
虫歯の進行度は、英語でむし歯を意味するCaries(カリエス)の頭文字を取った「CO、C1~C4」で表し、数字が大きくなるにつれ、重症になります。
また、虫歯の基本的な治療工程は、次の通りです。
- 虫歯を削る
- (虫歯の進行度がC3以上の場合)根管治療
- 詰め物や被せ物、歯の代替処置
ただし、保険治療と自費治療では、詰め物や被せ物に使用できる素材が全く異なるため、その結果、診察にかけられる時間、二次虫歯や歯周病リスク、審美性、耐久性に大きな差があります。
CO(シーオー:虫歯の前兆)の症状・治療法
「CO」の読み方は、C0(シーゼロ)ではなく、「要観察歯」を表す英語の(Questionable Caries under Observation) の頭文字を取った「CO(シーオー)」が正しい読み方となります。
この段階で治療を開始することが理想的ですが、自分では気づけないことが多いので、日頃から定期的に歯科医院で、歯の状態をチェックしてもらっていると安心です。
歯の状態
歯の表面からカルシウムなどが、少し溶け始めた(脱灰した)面がある状態
自覚症状
- 痛みはない
- 歯が白っぽく濁る
治療方法
- 歯科医院でフッ素を塗る(保険適用には条件あり)
- フッ素入り歯磨き粉で丁寧に歯を磨く(セルフケア)
C1(シーワン:初期の虫歯)の症状・治療法
痛みなく治療することができ、歯を削ることも最小限で済むことが多いので、この段階で治療を受けることが望ましいです。
歯の状態
細菌により、エナメル質が溶け始めた状態
自覚症状
- 痛みはない
- 灰色や薄茶色の穴・溝ができる
治療方法
虫歯を削って、詰め物をする
【保険治療】コンポジットレジン修復(詰め物)
虫歯部分を削り、白いプラスチック(レジン:合成樹脂)の詰め物を詰めます。
見た目のこだわりよりも、生活上問題なく咬めることを重視しています。
メリット
安価
デメリット
経年劣化で変色や詰め物の境に色が付くことがある
治療回数
1回
費用相場
1,500~2,000円/1本
【自費治療】ダイレクトボンディング(審美的ダイレクトレジン修復)
虫歯部分を削り、多種類のプラスチックで盛り付けていきます。
メリット
患者さん本来の歯(天然歯)のような色調や形の詰め物を入れることが可能
デメリット
保険治療よりもプラスチックが変色しにくいが、経年劣化に伴う、変色や境目の着色が起こることがある
治療回数
1~2回
費用目安
20,000~50,000円
※医療機関によって異なります。
C2(シーツー:本格的に進行し始めた虫歯)の症状・治療法
痛みを感じ始め、虫歯と気づく方も増えてきます。
エナメル質より柔らかいので、C2から先の虫歯への進行は一気に加速します。
歯の状態
エナメル質よりも内側の象牙質にまで、虫歯が進行した状態。
自覚症状
- 痛みを感じる
- 虫歯の部分が黒くなる(穴が開く)
- 冷たいものや甘いものがしみる
- 口臭が出る
治療方法
虫歯部分を削り、詰め物(レジン修復・インレー修復)や被せ物(クラウン)をする
【保険治療】コンポジットレジン修復
パテで穴を埋めるようなイメージで、白いプラスチック(レジン:合成樹脂)の詰め物を詰めます。
奥歯の隣接面を含む虫歯や大きい虫歯には対応できません。
メリット
- 安価
- 見た目のこだわりよりも、生活上咬めることを重視
デメリット
- 経年劣化による変色や詰め物の境が着色することがある
治療回数
1回
費用相場
1,500~2,000円/1本
【保険治療】メタルインレー(詰め物)、メタルクラウン(被せ物)修復
(画像)メタルインレー
隣接面を含む奥歯や大きな虫歯が対象です。金銀パラジウム合金で詰め物やかぶせ物をします。
メリット
- 安価
- 見た目のこだわりよりも、生活上咬めることを重視
デメリット
- 素材には非金属の銀も含まれているので、長期的な使用においては酸化・腐食・さびやすい
- 金属アレルギーのリスクがある
- 歯ぐきに沈着し、黒く変色することがある
- 銀色で目立つ
- 二次虫歯(銀歯の内部で虫歯になっている)のリスクが高い
治療回数
2回
費用目安
約2,000円/1本
【自費治療】ダイレクトボンディング(審美的ダイレクトレジン修復)
虫歯部分を削り、多種類のプラスチックで盛り付けていきます。
メリット
患者さん本来の歯(天然歯)のような色調や形に近づけることが可能
デメリット
- 保険治療よりもプラスチックが変色しにくいが、経年劣化により変色や境目の着色が起こることがある
- セラミックの詰め物に比べ、強度は弱いので、経年劣化により少しずつ削れていくことがある
治療回数
1~2回
費用目安
20,000~50,000円
※医療機関によって異なります。
【自費治療】セラミック・ジルコニア修復(詰め物)
詰め物・被せ物の素材には、陶器のような材質の「セラミック」や別名、人工ダイヤモンドとも呼ばれる「ジルコニア」を使用します。見た目の良さ(審美性)はセラミック>ジルコニア、硬さはジルコニア>セラミックです。
ただし、歯ぎしり・食いしばりの癖がある方には、不向きです。
メリット
- 歯との適合精度が高い
- 接着剤の劣化が少ない
- 虫歯・歯周病リスクを下げることが可能なので、再治療を少なくできる
- 金属アレルギーの心配がない
- 見た目が天然歯のように美しい
デメリット
- セラミックは、硬いのに割れやすい性質がある
- ジルコニアは、エナメル質の約4倍もの硬度があるため、咬み合う反対側の歯(天然歯)が削れやすい
※マウスピースを付けることで、歯への負担を軽減できることもあります。
治療回数
2~3回
費用目安
- インレー(詰め物)30,000円~100,000円/1本
- クラウン(被せ物)50,000円~150,000円/1本
※医療機関によって異なります。
C3(シースリー:神経まで進行した虫歯)の症状・治療法
大きく穴が開き、激しい痛みを伴うため、ほとんどの人が虫歯ができたと気づきます。
この段階まで進行すると、詰め物・被せ物をする前に「根管(こんかん)治療」が必要となります。
歯医者さんによっては、根管治療のことを「神経を取る治療」「根っこの治療」という呼び方をする場合もあります。
歯の状態
虫歯が象牙質を超えて、神経まで到達した状態。
自覚症状
- 冷たいもの・温かいものが酷くしみる
- 大きな穴が開いたり、大きく欠けたりする
- 何もしなくてもズキズキと痛む
- 強い口臭が出る
治療方法
歯の神経を取り、根の中を消毒(根管治療)した上で、土台を作り、被せ物をする
【保険治療】根管治療+土台作成(レジン・メタル)+被せ物(レジン・メタル)
根管治療については、記事「いつ終わるの!?痛みはいつまで?歯の根の治療、根管治療の期間と流れ」にて詳しく説明しています。
土台(コア)および被せ物の素材には、メタルもしくはレジン(プラスチック)を使用します。
ただし、レジンは強度に問題があるため、負荷のかかる奥歯や深い虫歯がある部分には、原則使用できません。
メリット
- 安価
- (レジンの場合)見た目が良く、金属アレルギーの心配がない
デメリット
- 経年劣化による二次虫歯・歯周病リスクが高い(根管の再治療リスクが高い)
- (メタルの場合)金属アレルギーのリスクがある
- (レジンクラウンの場合)経年劣化によって変色することがある
- (メタルクラウンの場合)銀色で目立ち、金属の溶け出しによる歯ぐきの黒ずみがみられることがある
治療回数
5~7回(根管治療3~5回+土台作成・被せ物調整2~3回)
費用目安
約1,000円~3,000円/根管
※被せ物などの諸費用は別途必要です。
【自費治療】精密根管治療+土台作成(ファイバーポストコア)+被せ物(セラミック・ジルコニア)
精密根管治療では、歯科用の顕微鏡である「マイクロスコープ」や、細菌が多く含まれる唾液などが治療する歯に入らないよう防ぐ、薄いゴム製のシート「ラバーダム」などを用いた治療を行います。
精密根管治療で使用している設備の特長については、記事「歯の根の治療が得意な歯科医院を探す方法・根管治療の専門医とは?」の中で詳しく説明しています。
また、土台はファイバーポストコアが選択され、グラスファイバー(繊維強化プラスチック)素材を使用しているので、天然歯の象牙質と同様、弾性に優れるため、歯の根の破損を予防することが可能です。
メリット
- 抜歯を回避することができる可能性がある
- 根管の再感染リスクが低い
デメリット
- 特別な設備が必要となるため、実施している歯科医院は限られる
- 根管治療、土台、被せ物すべて自費となるため、治療費が高額となる
治療回数
5~7回(根管治療1~4回、土台作成・被せ物調整2~3回)
費用目安
合計200,000円~
(精密根管治療80,000円~150,000円、土台10,000円、被せ物30,000~150,000円)
※使用する素材のほか、医療機関によって異なります。
C4(シーフォー:ほとんど歯がない虫歯)の症状・治療法
虫歯の最終段階で、C3同様の激しい痛みを感じます。
また、虫歯菌によって神経が食い尽くされると、痛みを感じなくなることもあります。
歯の状態
歯冠(目に見える歯の部分)がほとんど失われ、根の部分だけ残っているか、いないかといった状態。
自覚症状
- 冷たいもの・温かいものが酷くしみる
- 大きな穴が開いたり、大きく欠けたりする
- 何もしなくてもズキズキと痛む
- 以前、強い痛みがあったが、次第に痛みを感じなくなることもある(歯が死んでしまった状態)
- 強い口臭が出る。
治療方法
- 抜歯(歯を抜く)+歯の代替処置(ブリッジ・入れ歯・インプラント・歯牙移植・矯正治療など)
- 歯を残せる場合:根管治療+被せ物(C3治療と同じ)
【保険治療】抜歯+ブリッジ(硬化レジン・メタル)
欠損歯が1~2本の場合に適応となり、両端の歯を使って、橋渡しのように人工歯を作る治療です。人工歯の素材は、前歯・犬歯なら硬化レジン、奥歯ならメタルとなり、人工歯の寿命は約7年です。
メリット
- 安価
- 入れ歯のような違和感がない
デメリット
- 取り外しはできない
- 欠損歯の支柱にするため、両サイドの健康な歯を削らなければならず、削ることでむし歯リスクが高くなる
治療回数
3~5回(抜歯1回+ブリッジ2回~)
※歯の代替処置は、抜歯後1~2か月空ける必要があります。
費用目安
10,000円~30,000円/1本
【保険治療】抜歯+入れ歯(プラスチック樹脂の人工歯と義歯床、金属製の留め具)
抜けた歯の両サイドに健康な歯がない場合、多くの歯を失ってしまった場合、ブリッジ治療を行いたくない場合などに適応となります。
保険治療の部分入れ歯は、アクリルレジン(プラスチック樹脂)の人工歯と歯ぐきに似た色の義歯床、金属製の留め具(クラスプ)から構成されます。
メリット
- 安価
- ブリッジ治療をするための健康な歯を削らなくてよい
デメリット
- 強度を出すために厚めに作られる、義歯床に違和感を覚える場合がある
- 金属の留め具が目立つ
- 調整するにも限度がある
治療回数
3~5回(抜歯1回+入れ歯2回~)
※歯の代替処置は、抜歯後1~2か月空ける必要があります。
費用目安
- 部分入れ歯 5,000円~15,000円
- 総入れ歯 約20,000~30,000円
【自費治療】抜歯+ブリッジ(セラミック・ジルコニア)
自費治療のブリッジでは、人工歯の素材がセラミックやジルコニアとなります。歯ぎしり・食いしばりの癖がある方には、不向きです。
メリット
- 天然歯に近く、透明感がある
- 自分の歯と同じように噛むことができる
- 変色しづらい
デメリット
- 欠損歯の支柱にするため、両サイドの健康な歯を削らなければならず、削ることでむし歯リスクが高くなる
- 治療費が高額となる
治療回数
3~5回(抜歯1回+ブリッジ2回~)
※歯の代替処置は、抜歯後1~2か月空ける必要があります。
費用目安
50,000円~250,000円/1本
※医療機関によって異なります。
【自費治療】抜歯+入れ歯
自費治療の入れ歯は、厚みの調節が可能な金属製の義歯床を選択することができます。
メリット
- 薄く、外れにくく、装着時に違和感の少ない入れ歯が作製可能
- 留め具がなく、一見入れ歯だと分からない「ノンクラスプデンチャー」も選択可能
- 患者さんに合った細かい噛み合わせの調整ができる
デメリット
- 入れ歯作製に時間がかかる
- 治療費が高額となる
治療回数
3~5回(抜歯1回+入れ歯2回~)
費用目安
- 部分入れ歯 100,000円~500,000円
- 総入れ歯 100,000円~1,000,000円
※医療機関によって異なります。
【自費治療】抜歯+インプラント
外科手術で人工の歯の根(人工歯根)を植えます。1本~無歯顎まで対応可能です。
メリット
- ぐらつきや外れる心配はなく、天然歯のようにしっかり咬むことが可能
- ブリッジのように、隣の健康な歯を削る必要はない
デメリット
- 事前検査や定期的なメンテナンスなど、通院回数が多い
- 治療費が高額となる
治療回数
7回~(抜歯1回+インプラント6回~)
費用目安
300,000円~500,000円/1本
※医療機関によって異なります。
【自費治療】抜歯+歯牙移植
欠損部分に自分の歯を移植する方法です。移植する歯には、親知らずや過剰歯が使用されます。
また、条件を満たせば、保険適用できる場合もあります。
メリット
- 自分の歯を使うので拒絶がなく、他の歯と同じようにしっかり噛める
- インプラントよりも歯周病リスクが少ない
デメリット
- 移植できる条件(同じようなサイズ・歯周病になっていない歯など)がある
- 定着しないリスクもある
- 実施できる医療機関が限られる
治療回数
1回
費用目安
40,000円~100,000円
※移植のみの費用。
【自費治療】抜歯+矯正治療
場所や周囲の歯の状況によっては、矯正治療で欠損部分を補うことも可能です。
治療回数および費用は、矯正治療の内容によって、異なります。
目白マリア歯科
最寄り駅:目白駅徒歩5分
住所:東京都新宿区下落合3-16-13 グランドール目白1F
電話番号:03-6908-2923
CT、マイクロスコープ完備。週に3日(月・水・土)精密根管治療専門日を設けている。ほとんどの根管治療を1~2回で終了できる。さらに歯内療法外科、歯科口腔外科を専門としている歯科医師も在籍してるため「歯根端切除術」「意図的再植」にも対応可能。精密根管治療について詳しく説明したページあり。